亡き妻と二人三脚で育てた無投薬豚ー江原養豚社長インタビュー

全国的も珍しく、完全に抗生物質不使用で飼育されている「えばらハーブ豚未来」。

食べられる食品選びに苦労されている方でも、この豚肉ならば大丈夫だと買い続けてくれている方もいるそうです。

通常は不可能とされている無投薬での養豚をどうやって成功させてきたのか、「(有)江原養豚」 代表の江原正治さんにお話を伺ってきました。

えばらハーブ豚未来について

えばらハーブ豚は、

  1. 出生から全飼育期間にわたって、抗生物質や合成抗菌剤不使用
  2. 生産情報公表豚肉JAS規格取得
  3. 飼料の主原料に非遺伝子組み替え作物使用

で育てている豚です。

病気にかかりやすい豚を生まれてからずっと抗生物質不使用で育てるのは難しく、国内で完全な無投薬の養豚をしているのは、江原養豚を含めて2箇所しかありません。

えばらハーブ豚は臭みや脂っこさがない一方で、旨み成分の含有量が多くて、サッパリしていながら味わいが深いのが特徴。塩胡椒だけや、味つけなしでも美味しく食べることができます。

飼料に配合しているハーブ

えばらハーブ豚資料配合ハーブ
エゾナミキ、オレガノ、カンゾウ、サンザシ、シナモン、ショウヨウ、ジンジャー、タンジェリン、ナツメグ、ミルクベッチ、ミントの11種類のハーブを配合した「抗菌性物質不使用ハーブ飼料」を与えています。

ハーブの効果

抗酸化作用 細胞膜強化作用 微生物増殖抑制作用
酸化の進行を防ぐ作用があり、酸化による嫌な臭いの発生を防ぎます。 細胞膜の強化は保水性を高くするとともに、旨味成分を維持します。 微生物の増殖を抑制する効果があり、鮮度の低下を防ぎます。
豚特有の臭いがなく、脂肪があっさりとします。 保水性が高まるので、肉がやわらかく、旨味があります。 ドリップが出にくく、鮮度、風味が長持ちします。

一般豚肉との栄養素のちがい

えばらハーブ豚未来と一般豚の比較(えばらハーブ豚は、脂質3.0g/100g、エネルギー122.3kcal/100g、オレイン酸46.9%、ビタミンB1 1.42mg/100g、ビタミンE 0.5mg/100gなのに対して、一般豚(食品成分表(5訂))は、脂質5.6g/100g、エネルギー 150.0kcal/100g、オレイン酸44.9%、ビタミンB1 0.80mg/100g、ビタミンE 0.3mg/100g) 日本食品分析センターで5訂に準ずる方法でサンプリングし分析。

一般豚に比べて、脂質は約53.5%と2分の1強になっているのに対し、ビタミンB1、ビタミンEは約2倍になっています。

えばらハーブ豚のこれまで

不可能とも言われていた豚の無投薬飼育をなぜ続けてこられたのか、えばらハーブ豚の19年の歴史を、「(有)江原養豚」 代表の江原正治さんにお聞きしてきました。

「(有)江原養豚」 代表 江原正治さん
「(有)江原養豚」事務所にて。亡くなった奥様の写真がたくさん飾られていました。

飼料会社からの誘いで無投薬飼育を開始

群馬県高崎市で、二代にわたって養豚を続けられている「(有)江原養豚」 。

(有)江原養豚

先代の後継として養豚を始めた40年前から、江原さんは豚の衛生検査を実施して、豚の健康管理を続けてきました。

養豚を始めてちょうど21年目の2000年、豚の飼料の取引先の日清飼料から、「抗生物質を全く与えない、無投薬飼料の養豚を始めてみないか。」という誘いを受けます。

無投薬飼料の試験先として江原養豚に白羽の矢が立ったのは、それまで20年の衛生検査を続けてきた歴史があって、日清飼料の取引先の中で、江原養豚の豚の健康状態がかなり良かったため。

江原さんはそれまで無投薬飼育を考えたこともなく、豚を無投薬で育てることなど無理だろうと考えていたのですが、今後生き残るために今と同じことを繰り返しているだけではダメで、立地条件的に規模拡大は難しい中で、何かを新しく始めなくてはいけないと悩んでいたところだったので、奥様とも相談し、その誘いを受けることに決めました。

100頭の試験飼育は順調

無投薬飼育を始めるにあたって、まずはサンプルとして100頭の子豚を、試験的に無投薬で育てることにしました。

試験飼育は順調で、無投薬で育てた豚の健康状態は良くて内臓も健康だったため、全頭を無投薬飼育に切り替えることになりました。

3年間はうまくいかず、倒産寸前に

試験飼育は順調だったのですが、新しく産まれる子豚を無投薬飼育にしていって、無投薬飼育の豚が大多数になった頃、豚たちの健康状態が目に見えて悪くなっていきました。

病気ではないものの、明らかに毛艶が悪くなり、不健康そうな見た目になってしまったのだそうです。

日清飼料の管理獣医師とも相談しあって、色々対策をとってみても改善せず、当時問屋になって肉を卸していたハム会社のバイヤーからは、肉の質が悪いと酷評されていました。ずっと世話になってきていた顧問税理士からも、このままだと会社がダメになるから、早く(無投薬飼育を)やめるようにと言われる日々。

3年目の決算書を前にして、これはもう続けていけないだろうと、奥様と管理獣医師を前に、無投薬飼育は中止しようと思うと話しました。

でも奥様は、「本当にそれでいいの?ここで諦めちゃって本当にいいの?」とおっしゃっていて、もう一回だけ改めて勉強し直そうと思い、無農薬栽培の苺農場や、ヘドロだらけになった海が一部だけ再生した瀬戸内海の牡蠣養殖場など、全国各地を見学して回りました。

転機となる励まし

そうやって全国を回っていた時期に、都内で開催された医学博士の抗生物質の耐性菌についてのセミナーに参加して、終了後セミナー会場を出た後に、ふと思い立って会場に戻り、後片付けをしていたスタッフの方に、「自分はこういう者で、豚の無投薬飼育をしているけどうまくいかず、倒産寸前なのです。」と話しました。

するとそのスタッフの方が、セミナーの主催者の方や、新聞や雑誌の記者が集まっている部屋に案内して下さり、そこで自分の取り組みについて話しました。その人たちは、「あなたのやっていることは本当に素晴らしいことだから、絶対にやめちゃいけない。」と言い、諦めずに続けるように励ましてくれました。

これまでの3年間、自分の取組みを評価されたことがなかったので、このことは江原さんにとって大変な励みになったそうです。

「この時の出会いがなければ、今はなかったと思います。」(江原さん)

ちょうど4年目から、何か特別新しいことを始めたわけではないのですが、豚たちの健康状態も少しずつ良くなり、質の良い豚肉を出荷できるようになりました。

養豚場の様子

これまで取引していたハムメーカーのバイヤー以外に、地元スーパーのバイヤーとの取引も始まって、知人から、江原ハーブ豚を食べたよ、美味しかったよと声をかけられるようになります。

直接消費者の声を聞けるのが励みになって、また、これまでハムメーカーのバイヤーに悪い評価しか受けていなかったのが消費者に評価してもらい、自信にもなったそうです。

地元の食肉卸会社「群馬ミート」との取引も始まり、無投薬飼育を始めて4年目から、養豚場の経営はようやく光が見え始めました。

販路の拡大と飼育技術の向上の二人三脚

江原さんが飼育方法の改善に日々取り組み努力するのとともに、奥様が営業担当となって、バイヤーや料理人の試食会に出展するなど、販路の開拓を目指して積極的に動いていました。

江原養豚試食会

試食会で、一流ホテルの料理長が肉を食べてみるだけでなく、肉の出汁の味や透明度を見ているのを見て、「そういうところの質もあげないといけないんだな。」と今後のための勉強にもなったそうです。

その努力の甲斐あって、江原ハーブ豚を選んで買ってくれるレストランなども増えていきました。

また、自作のホームページやパンフレットで、自分たちの言葉で消費者に発信し続けることも大切にしていました。

2007年 大地を守る会での取り扱いが開始

販路拡大の営業の一環として、大地を守る会もあったのですが、大地を守る会の畜産物取扱基準として「非遺伝子組み替え飼料で飼育していること」があり、当初江原養豚の飼料は非遺伝子組み替えの原料で作られてはいなかったため、大地を守る会での取扱いは見送られていました。

飼料原料を非遺伝子組み替えでポストハーベストフリーのものに変更するのは大変コストがかかります。

生産量全体に対して、大地を守る会での取扱量はごく一部に限られてしまうので、飼料原料変更に踏みきるべきかは悩ましいところだったのですが、飼料をつくっている日清飼料に相談したところ、「やるしかない。」と決断してくれて、非遺伝子組換え飼料を開発してくれました。

そうして2006年に全量の餌を非遺伝子組換え飼料に切り替え、2007年に大地を守る会での取扱が開始されました。

大地を守る会での販売が決まったことで、「これで全国区だ」と感慨深かったと江原さんは振り返ります。

2013年にはらでぃっしゅぼーや、2018年からはコープデリも

大地を守る会に続き、2013年にはらでぃっしゅぼーやでの取り扱いが決まります。

らでぃっしゅぼーやでは初め、野菜担当の方が堆肥を見に来て、これだけ堆肥の質が良いならば豚肉も良いはずだから見せてほしいと言ったのがきっかけで、社内試食会などを繰り返し、えばらハーブ豚の美味しさを認められて、取引が始まったのだそうです。

また、2018年にはコープデリからも声をかけられて、コープデリでの取り扱いも開始しました。ここで初めて、当初に目標としていた残り限りの数量限定販売をすることになりました。

本当に必要としてくれる人に届けたい

江原さんのもとには、アレルギーや化学物質過敏症で、他の豚肉を食べると症状が出てしまう方々から、

「他のどんな肉を食べてもダメだったのに、ここの豚肉だけは症状が出なかった。」
「この豚肉に出会えて良かった。本当にありがとうございます。」

という感謝の声が寄せられています。

儲かるための養豚ではなく、そういう人たちのための養豚をしていて、意味ややりがいを感じられるし、今までやってきて本当に良かったと感じられているそうです。

2015年に奥様が他界されてからも、ご長男の奥様やスタッフさんの力を借りながら、365日休むことなく養豚を続けていらっしゃいます。

えばらハーブ豚を取り扱っている食材宅配会社

えばらハーブ豚は、大地を守る会らでぃっしゅぼーやコープデリ、ナチュラルコープ横浜で購入できます。

えばらハーブ豚切落とし肉

私もらでぃっしゅぼーやで、えばらハーブ豚の冷蔵切落とし肉(※えばらハーブ豚の冷蔵肉があるのは、現在らでぃっしゅぼーやだけです。他は冷凍での取扱い。)を買ったのですが、本当に新鮮で臭みがなく、塩胡椒せずに食べても美味しいので驚きました。

えばらハーブ豚切落とし肉 調理後

脂っぽくなくサッパリしているんですが、旨みはたっぷりなんですよね…!

肉質もやわらかくて、丁寧に飼育されてきた豚肉というのは、これだけ質が良いものなんだなと感じさせられます。

えばらハーブ豚は、宅配会社での取り扱いだけでなく、江原養豚のホームページでも直接販売もされています。↓

生産情報公表豚肉JAS認定農場「(有)江原養豚」 http://www.ebarayohton.co.jp/

江原養豚を訪ねてみて まとめ

江原さんのお話をお聞きして、一度は断念しかけた無投薬飼育を19年間続けてこられたのは、並大抵でないご苦労があったことと頭の下がる思いでした。

家族経営で365日休むことなく、さらに豚たちを病気にしないよう細心の注意を払って飼育し続けるのは、本当に大変なことだと思います。

また、印象的だったのは、良いものを作り続けることだけでなくて、亡き奥様が中心となって、自分たちの言葉で、本当に必要としてくれる人に届くよう発信にも力を入れられていたことです。

その努力があってこそ、食べ物に悩む方が、えばらハーブ豚に出会えて良かったと言ってくれるのだと、本当に意味があるお仕事をされていることに感動しました。

今回のこの記事も、えばらハーブ豚を本当に必要とされる方がこの豚肉を知ってくださるきっかけになれば嬉しいです。

今回出てきた食材宅配会社↓

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